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IBM iとは?AS/400との違いや特徴、将来性などを解説

2023.04.17

IBM が提供する独自のオペレーティングシステムであるIBM i は、主に IBM Power サーバー(旧AS/400)で利用されています。当記事では、その概要、AS/400 との違い、特徴、サポートしている言語、最新バージョンとサポート期間(サポートライフサイクル)、さらにはその将来性などを解説していきます。

IBM iとは?

IBM i は、IBM が開発した独自のオペレーティングシステムの名称で、オフィスコンピュータ(オフコン)に使用されています。1988年に登場した AS/400 との関連性も含め、IBM i の特徴や役割について説明していきます。AS/400 と IBM i の違いを通じて、システムの進化もご紹介します。

IBM独自のOS(OS/400)

IBM i は、IBM Power サーバーなどに搭載することのできる IBM 独自のオペレーティングシステムです。1988年に「OS/400」という名称で初登場し、当時のハードウェアである AS/400 に組み込まれていました。この「OS/400」は、時代と共に進化し、現在では「IBM i」として知られています。信頼性が高く、複雑な業務処理を効率的に行うための多くの最適化が施されています。

AS/400 のレガシーシステムとも高い互換性を保ち、既存のシステム資産を維持しつつ、最新技術に対応可能な点が特徴です。IBM i は世界中の企業で基幹システムとして採用されており、堅牢なプラットフォームとしての評価を確立しています。

オフコンの一種

オフコンとはオフィスコンピュータの略称で、特に日本の中小企業で広く利用されてきました。オフコンは主に業務処理や基幹システムを支えるために使用されており、安定性と長期間にわたる運用が可能なシステムとして認識されています。AS/400 や IBM i が搭載されている IBM Power サーバーも、こうしたオフコンの一種として位置づけられます。

AS/400 は1988年に IBM によって開発され、当時から多くの企業の基幹業務を支えてきました。現在もなお、IBM i はオフコンの特長を引き継ぎ、ビジネスに必要な高度な処理能力と信頼性を提供しています。中小企業から大企業まで、さまざまな業種で IBM i が利用され続けています。

IBM iとAS/400の違い

AS/400 は、OS/400 という IBM 独自の OS を搭載したオフィスコンピューターの名称です。AS/400 は、ハードウェアと OS を含めたシステム全体を指すことが多いですが、IBM i は AS/400 の後継となるハードウェア(現在の IBM Power サーバー) 上で動作する最新の OS に焦点をあてた名称です。(ただし、IBM i も広い意味ではハードウェアを含むシステム全体を指す場合があります。)

AS/400という名称は現在も業界でよく使われますが、実際には IBM Power サーバーと IBM i がその役割を担っています。なお、IBM i は単なる OS ではなく、データベース管理やセキュリティ機能も統合された包括的なシステムを提供しており、ハードウェアを問わずに利用できる点が AS/400 との大きな違いでもあります。

IBM iの特徴

IBM i は、TIMI によるプログラムの継承性や、単一レベル記憶(SLS)による優れた処理性能、高度なセキュリティ機能を備えており、最新のAIや機械学習などの技術にも対応しています。これにより、30年以上にわたり、進化を続けながらも堅牢な基幹システムを支え続けています。

TIMIによるプログラムの継承性

TIMI(Technology Independent Machine Interface)は、IBM i の強力な仮想化技術のひとつです。TIMI は、プログラムの互換性を高める役割を果たしており、20年前に AS/400 上で作成されたアプリケーションであっても、IBM i 上でそのまま動作させることができます。具体的には、プログラムが一度コンパイルされると、ハードウェアの変更に依存せず、どの世代の IBM Power サーバーでも実行可能です。

これにより、長期的なシステム運用においても、既存の資産を最大限に活用でき、システムの刷新時に大規模な再開発が不要となります。IBM i のこうしたプログラムの継承性は、企業の IT 資産を守るための大きなメリットであり、安定した長期運用を可能にしています。

単一レベル記憶などによる高い処理性能

IBM i の処理性能の高さは、主に単一レベル記憶(SLS)という独自の技術に支えられています。単一レベル記憶とは、メモリとディスクストレージを統一的に管理する技術で、データがどこに格納されているかを意識することなく、アクセスできる仕組みです。この技術により、データの読み書き速度が最適化され、システム全体の処理性能が向上しています。

さらに、SLS は物理メモリが不足した場合でも、システムのパフォーマンスを損なわずに動作できる点が優れています。IBM i は、この技術により、大量のデータ処理や複雑な業務アプリケーションを効率的に実行できるため、ビジネスクリティカルなシステムに最適なプラットフォームとなっています。

高度なセキュリティ機能

IBM i は、セキュリティ性の高さでも評価されています。その特徴は、オペレーティングシステムの設計段階から組み込まれている多層防御のセキュリティ機能にあります。IBM iは、ユーザー認証、アクセス制御、暗号化といった基本的なセキュリティ機能に加え、監査機能も強力です。

また、セキュリティパッチや定期的なアップデートにより、常に最新の脅威に対応することができます。ただし、セキュリティの強さは IBM i を導入するだけで担保されるものではなく、適切な設定や運用をすることが重要です。

つまり、IBM i は、その高度なセキュリティ機能により、企業が安心して業務データを管理できる環境を提供していると言えます。

AIや機械学習などの最新技術にも積極的に対応

IBM i は、30年以上にわたりその堅牢性が評価されていますが、同時に最新技術への対応も積極的に行っています。特に、AI(人工知能)や機械学習などの先進的な技術領域でも、IBM i は進化を続けています。最新のテクノロジーリフレッシュ(TR)は年に2回行われ、3年に1度のメジャーアップデートを通じて、IBM i は新しい技術や機能を取り入れながら柔軟に対応しています。

さらに、クラウドとの連携やデータ分析の分野でも、AI を活用した新たなソリューションを展開し、既存のアプリケーションとの互換性を保っています。これにより、IBM i は、進化し続けるテクノロジーの中でも、堅実な基盤を提供しながら、最先端のビジネスニーズにも対応できるシステムとなっています。

IBM iがサポートしている主なプログラム言語

IBM i は多様なプログラム言語をサポートしています。特に、RPG は IBM i の主要言語であり、長年にわたり業務システムで広く使用されています。また、COBOL も古い基幹システムでよく使用され、レガシーシステムの互換性を保つために重要です。さらに、近年ではJava もサポートされており、オープンシステムとの連携を強化しています。以下の表で、IBM i がサポートする主要な言語を示します。

プログラム言語特徴
RPGIBM iの主要言語、業務システムで広く使用
COBOL古い基幹システムでよく使われる言語
Javaオープン系システムと連携可能、最新技術対応

RPG

RPG(Report Program Generator)は、IBM が開発した独自のプログラミング言語で、主に IBM i 環境で使用されます。RPG は、特に基幹業務システムの開発においてその効率性が評価されており、企業が長年にわたって運用しているシステムの多くが RPG で構築されています。また、RPG は進化を続けており、現在もモダンなアプリケーション開発で活用されています。そのため、IBM i 上で動作するシステムの維持・拡張において、RPG は重要な役割を担っています。

COBOL

COBOL(Common Business Oriented Language)は、1959年に開発された商用プログラミング言語で、特に金融機関や大規模な業務処理システムで広く採用されています。IBM i も、COBOL で開発された多くのレガシーシステムに対応しており、その強固な互換性により、既存の COBOL アプリケーションを長期間にわたって運用し続けることができます。COBOL は、特に業務システムの信頼性と安定性を求められる環境で重宝されており、IBM i の強みのひとつとなっています。

Java

Java は、汎用性の高いプログラミング言語で、オープン系のシステム開発に広く使用されています。IBM i でも Java を利用したアプリケーション開発が可能であり、特に最新のウェブアプリケーションやクラウド連携において Java の柔軟性が活かされています。Javaはそのクロスプラットフォーム性により、他のシステムとの連携や移行が容易であり、IBM i でもその特長を活かして、さまざまなシステム開発に対応しています。IBM i 上での Java の利用は、システムのモダン化を図るための重要な選択肢となっていますが、RPG やCOBOL ほどメジャーではありません。

このように、IBM iは古い言語から最新の技術まで幅広くサポートしています。

IBM iの現在のバージョンとサポート期限

2024年現在、IBM i の最新バージョンは7.5です。バージョン7.3のサポートは2023年に終了しましたが、延長サポートを利用すれば2026年までのサポートを受けられます。このようなライフサイクル管理により、企業は自社システムの更新時期や長期的な運用計画を立てやすくなります。IBM i のサポート期間は通常約7年間、その後3年間の有償延長サポートが提供されるため、合計で約10年間サポートされることになります。

最新バージョンである7.5は、2022年5月にリリースされ、今後も新しい機能や改善が行われる予定です。IBM i Next のリリースは2025年に予定されており、IBM は2035年までのロードマップを公開しています。これにより、IBM i ユーザーは長期的なシステム運用に対する安心感を得ることができます。

バージョン出荷開始サポート期限有償延長保守期限
7.22014年5月2021年4月2024年4月
7.32016年4月2023年9月2026年9月
7.42019年6月未発表未発表
7.52022年5月未発表未発表
IBM i Next2025年予定

このように、IBM i は長期的なサポート体制を整えながら、新たな技術に対応し続けています。

IBM iの将来性

IBM i は、その高い性能と安定性から、長年にわたり多くの企業で基幹システムの中心として使用され続けています。特に日本国内では、多くの中堅・大企業が IBM i を採用しており、業務システムの基盤として重要な役割を果たしています。また、IBM は2035年までのロードマップを発表しており、定期的なバージョンアップやテクノロジーリフレッシュによって、IBM i はこれからも進化を続けていくことが伺えます。

将来に対しては、IBM i に詳しい技術者が減少しつつあり、システムのブラックボックス化が進むことでシステムの維持管理が難しくなるという課題が挙げられるなど不安視される要素もあります。しかし、この問題に対応するために、企業は積極的に教育や外部サポートを活用し、後継者育成やノウハウの共有を進めています。

結論として、IBM i はその堅牢性と信頼性から、今後も多くの企業で利用され続けるでしょう。AI やクラウドとの連携など、最新技術に対応することもでき、今後のビジネスシーンでも重要な位置を占めることが期待されています。

まとめ

IBM i は、その信頼性や高性能な処理能力により、長年にわたって基幹システムの中心として使用されてきました。AS/400 の後継として、最新技術に対応しつつ、レガシーシステムの互換性を保ち続けています。将来に向けては、人材不足やシステムのブラックボックス化といった課題もありますが、2035年までのロードマップが示されていることからも、IBM i は今後も進化を続け、企業の重要なインフラとして活躍していくことでしょう。