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おわりに |『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』

2025.03.04

2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
今回は、最終章の内容をまとめています。

おわりに

本書では、主に以下のメッセージをお伝えしました。

IBM i の強みとデジタル化の必要性

・IBM i は、カスタムメイドのアプリケーションを動かすプラットフォームとして優れている。
・デジタルシフト、SaaS、AIの登場により、企業のデジタル化の重要性が高まっている。
・労働人口の減少や終身雇用の変化に直面するIBM i ユーザーは、AI・API・クラウドを活用することで業務を変革できる。

具体的には、IBM i をバックエンドとして活用しながら、フロントエンドを最新ツールとAPI連携で進化させること、AIを活用して開発効率を向上させること、クラウドでインフラ管理の負担を減らし迅速な対応力をつけることが鍵となります。

また、IBM はIBM i を中長期で提供し続ける合理的な理由を持ち、IBM i の提供終了の可能性は低いと考えられます。他のプラットフォームへの移行が成功した事例が少ないため、IBM i を活用しながらAI・API・クラウドを取り入れる戦略が有効です。

IBM i の今後と企業間連携の課題

私たちは、IBM i が唯一の正解ではなく、その特性と今後の活用方法を正しく理解し、企業ごとに適切な戦略を立ててほしいという想いで本書を執筆しました。
最後に、IBM i の強みである基幹システムやエンタープライズ全体の変化を、企業間のサプライチェーンの視点から予測し、本書の締めくくりとします。

IBM i の将来について考える際には、エンタープライズ基幹システム全体の変化や、企業間をつなぐサプライチェーンの視点が重要です。現状の課題としては、以下が挙げられます。

・企業間のやりとりは、メール・Excel・FAX・電話などが主流であり、非効率な部分が多い。
・EDIの導入は進んでいるものの、人手が必要な業務も依然として多い。
・基幹システムの情報をリアルタイムで共有することで、企業間連携を効率化できるが、データの取り扱いには慎重な検討が必要。

これらの課題を改善するためには、基幹システムの情報をリアルタイムに取引先と共有することで効率化が期待されます。しかし、データ共有の範囲は慎重に検討する必要があり、加えて生産人口の減少により産業全体が効率化を求められています。これはIBM i に限らず広範な影響を及ぼす課題です。

さらに、自然災害やパンデミック、地政学リスク、サプライチェーンの寸断、半導体不足、原材料高騰といった問題が顕在化しています。同時に、ESG・環境・人権・トレーサビリティへの関心が高まり、カーボンニュートラルやEVシフトなどの動きも進んでいます。これらの課題は、特にものづくり産業のバリューチェーン高度化において、重要なテーマとなっています。

今後、バリューチェーン全体がさらに進化していくことが予想されます。その根拠として、以下の2つの事例が挙げられます。

1つ目は、企業間の受発注においてAPI連携を導入する企業が増えていることです。例えば、半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ(TI社)は取引先向けにAPIを公開し、メーカーの在庫をリアルタイムで把握しながら即座に受発注ができる仕組みを整えています。これにより、IBM i の基幹システムとAPIを連携させ、調達業務を効率化する企業が増えています。

2つ目は、取引先向けに基幹システムのデータをリアルタイムで共有したいというニーズの高まりです。弊社の「MONO-X One(旧Next B2B・MONO-X B2B)」の提案を通じて、こうした動きが加速していると感じています。クラウドの普及により、セキュリティやアクセス権管理を考慮しつつも、リアルタイムでのデータ共有を実装する企業が増えています。特に、FAX・電話・メールによる受発注をWeb化したい、仕入れ先に生産計画をリアルタイムに伝えたいといったニーズが多く見られます。

こうした流れから、取引の自動化が進み、バリューチェーン全体でリアルタイムの受発注が一般的になることは確実です。その中で、IBM i の価値が改めて評価される時代が来ると考えられます。IBM i は歴史のあるプラットフォームとして古い印象を持たれがちですが、API連携や取引先向けのWeb公開が容易であり、基幹システム同士の接続が進む中で、その信頼性、高パフォーマンス、高セキュリティ、資産継承性がさらに重視されるようになるでしょう。

MONO-Xは、企業間取引(サプライチェーン)をリアルタイム化するプラットフォームの構築に取り組んでいます。多くのIBM i ユーザーを支援する中で、こうしたニーズが高まっていることを実感してきました。しかし、取引先が必ずしもIBM i を利用しているわけではなく、この課題は産業全体に共通するものです。

サプライチェーンの課題を解決することで、IBM i ユーザーにとってはカスタムメイドの基幹システムを維持・成長させやすくなり、競争優位を築くメリットがより大きくなると考えています。特に、IBM i ユーザーが多い製造・流通業のニーズが、産業全体の変革を促す起爆剤になり得ると感じています。

これまで、デジタル化が進まない理由としてIBM i が挙げられることがありましたが、AI・API・クラウドの活用によって、IBM i はさらに使いやすくなっています。本書でも強調した通り、IBM i は長年多くの企業に支持されてきたIT製品であり、今後もその価値が再評価される時代が来ると確信しています。

企業間の基幹システム連携が当たり前になる時代に向け、デジタル戦略の推進に挑戦する企業にとって、本書が少しでも役立つことを願っています。

当ブログでは、書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』の内容をサマリー形式でご紹介し、IBM i の強みや、AI・API・クラウドを活用した業務変革の可能性についてお伝えしてきました。これからの企業のIT戦略を考えるうえで、IBM i を活用する意義や、変化するビジネス環境にどう適応していくかを考える一助となれば嬉しく思います。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。今後も、ITとビジネスの未来について有益な情報をお届けしてまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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