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【第7章(1/2)】デジタル人材の需要増、シニア化、人口減少 |『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』

2025.02.19

2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
今回は、【第7章(1/2)】デジタル人材の需要増、シニア化、人口減少(本書P.156~)の内容をまとめています。

「2025年の崖」で改めて注目された、基幹システム人材のサステナビリティ

基幹システム領域では人材不足が深刻化しており、終身雇用の崩壊により「後継者育成」から「多くの人々が業務を運用する」方向へとシフトが求められています。さらに、生産人口の減少を踏まえ、マニュアル作業の削減が不可欠です。こうした状況の中、「API・クラウド時代」ともいえる基幹システム3.0が進展し、業務改善や人材不足の解決に寄与する新たな実装方法が登場しています。

情報システム部のスーパーマン依存体制から分業型への転換

IBM i ユーザー企業の中には、ビジネスからインフラまで全てを担うスーパーマン的な担当者が存在することがあります。しかし、個人に依存した体制は業務継続性の観点からリスクがあり、組織全体での分業体制への移行が求められています。

特に、以下の3つのスキルが重要視されます。
① ビジネス要件から情報システムの要件への落とし込みと業務改革・改善
② ①を踏まえたアプリケーション開発(フロントエンド・バックエンド)
③ ②を支えるインフラの運用・管理

しかし、②と③の業務負担が大きく、①に十分な時間を割けないケースが多く見られます。IBM i は特定の担当者が①~③を全て担うことが可能なため、スーパーマン依存が生じやすい環境にあります。

この課題を解決するために、以下の3つのアプローチが必要です。

1. 一般的なスキルで業務を遂行できる体制を整備(特殊スキルの不要化)
2. 特殊スキルが必要な業務は、早期習得できる仕組みを構築(特殊スキル修得の早期化)
3. 特殊スキルが必要でも自社ビジネスの理解が不要な業務は、ベンダーロックインを避けつつ外部委託(特殊スキルの外部化)

AI・API・クラウドの活用により、スーパーマン依存からの脱却が可能になり、IBM i の特性を活かしたDXが実現しやすくなります。本来、最も集中すべきはビジネス要件と情報システム要件の橋渡しであり、実装業務は極力シンプルにすることが理想です。

人材視点からのAI・API・クラウドの価値

人材戦略の観点から、AI・API・クラウドがIBM i の運用をどのように支え、その体制を維持するのかを具体的に見ていきます。まず、IBM i を活用した基幹システムの実装を、フロントエンド、バックエンド、インフラの3つのレイヤーに分けて考えることが重要です。

フロントエンド開発…API

フロントエンド開発の人材不足を解決する鍵となるのはAPIです。API連携により、IBM i 独自のスキルが不要になり、フロントエンド開発が容易になります。

IBM i のユーザーがシステムを操作する方法には、黒いエミュレーター画面とグラフィカルなWeb画面の2つがあります。黒い画面は比較的容易に作成できますが、Web画面の開発にはHTML、JavaScript、PHP、Javaといったフロントエンド技術が必要になります。さらに、IBM i のデータをリアルタイムに表示するアプリケーションを作るには、フロントエンドとバックエンドの両方のスキルが必要ですが、こうした技術者は少なく、育成や外部委託も難しい状況です。

この課題を解決するのがAPIです。APIを活用すれば、IBM i のスキルがなくてもデータを活用したアプリケーションの実装が可能になります。

APIの準備はバックエンドの技術者の担当ですが、API化ソリューションの進化により2020年以降、この作業は格段に簡単になりました。 これにより、フロントエンド開発者とIBM i のバックエンド技術者が協力しやすくなり、新たな開発の可能性が広がっています。

また、フロントエンドがWebではなくSaaSを利用する場合でも、IBM i がAPI連携可能であれば、SaaS側とIBM i 側の自由なデータ連携が実現します。

バックエンド開発…AI

IBM i のバックエンド開発では、主にRPG、COBOL、CL、SQLが使用されています。特にRPGとCOBOLはレガシー言語とされ、習得が難しいとされてきました。その理由は、言語自体の難しさではなく、教材の少なさや研修費用の高さにあります。

一般的なプログラミング言語は、Web上に多くの教材があり、個人でも学習可能ですが、RPGやCOBOLは高額な研修を企業が負担しないと受講できないケースが多く、現場では古い研修テキストを渡され、実務の中で先輩社員に教わる形式が一般的です。そのため、指導者がいなければ習得が困難な状況にあります。

こうした課題の解決策としてChatGPTが注目されています。ChatGPTはRPGやCOBOLの技術相談に応じ、サンプルコードを提供することで、学習支援ツールとしての役割を果たします。特にRPGは英語の情報源が多いため、ChatGPTを活用すれば、日本語検索よりも多くの情報に間接的にアクセスでき、学習や開発の生産性が大幅に向上します。

また、レガシープログラムと新しい言語を変換するツールはすでに存在しますが、生成AIの進化によってその精度が向上し、テストもしやすくなると期待されています。これにより、レガシー言語の壁を乗り越える時代が到来するでしょう。

バックエンド開発(特に設計の部分)はユーザー企業が主導権を持つべきですが、レガシー言語が特殊スキルとなることで、人材育成のハードルが高くなっています。この点はIBM i の課題の一つですが、AIの進化がこの問題を解決することが期待されています。

インフラ…クラウド

最後に、インフラ管理について見ていきます。IBM i のインフラ管理は非常にシンプルで、Windowsやx86サーバーのようにCPUやメモリの綿密な監視は不要です。IBM i はCPU使用率が100%でも安定して動作し続けるため、基本的にはストレージ容量の監視だけで運用可能です。しかし、他のOSではCPU使用率の上昇によりパフォーマンス劣化やサーバーダウンのリスクがあるため、細かな監視が必要となります。

一方で、IBM i のハードウェアリプレースは数年に一度の作業となり、ノウハウの継承が難しい側面があります。しかし、クラウドの普及により、この状況は大きく変わりました。

オンプレミスではハードウェアの購入や環境の構築・削除が容易ではなく、バージョンアップ作業は一大イベントになります。そのため、多くの企業がハードウェアの保守期限やリース期限まで古いバージョンのまま維持することが一般的でした。これに対し、クラウドを活用すればバージョンアップやハードウェア移行の負担が大幅に軽減され、定期的なシステム更新が可能になります。IBM Cloud の操作にはある程度のスキルが必要ですが、外部委託が可能であり、ユーザーはインフラ管理の負担から解放されるようになります。

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