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生成AIが切り開くRPGコードアシスタントの未来――日本IBM茂木氏が語るその取り組みと可能性

2025.01.08

生成AIの進化がRPGプログラム開発にも変革をもたらそうとしています。IBMが推進する「RPGコードアシスタント」の取り組みについて、プロジェクトの詳細と今後の展望を日本IBM 茂木氏に伺いました。

生成AIによるRPGコードアシスタントの取り組み

【下野】
昨今、RPGの資産を次世代にどう継承していくか、というのは、大きなテーマになっています。生成AIは、まさに IBM i の技術者課題を解決する一つの重要なテクノロジーとしては間違いなくなっているでしょう。そうした中で、IBMとしてはどのような取り組みを行っているのでしょうか?

茂木】
IBMでは、グローバルおよび日本の両方で「RPGコードアシスタント」の取り組みを進めています。特にグローバルでは、生成AIを活用してRPG開発者を支援する以下の3つの機能を開発しています。
グローバルの取り組みと、日本の取り組みの大きな違いの一つは、フリーフォームRPGをターゲットとしているか、固定フォームRPGをターゲットとしているかです。

日本では、多くの企業が固定フォームRPGを利用しており、IBM i ユーザーも非常に多いことから、日本独自のプロジェクトも行っています。

【下野】
実は、ヨーロッパの企業で働いていた IBM i 技術者が弊社に転職してきたのですが、ヨーロッパではフリーフォームRPGが一般的とのことでした。日本と海外で、かなりフリーフォームRPGの浸透度が違うようですね。
では、生成AIを使うユースケースとしてはどのようなことを想定されているのでしょうか。

茂木】
現在、グローバルのプロジェクトで特にターゲットとしているユースケースは、主に以下の3つです。

1. 既存コードの説明生成機能 : RPGコードを入力すると、そのコードを自然言語で説明する機能です。
2. 自然言語からのコード生成機能 : 自然言語で記述された仕様書から最新のフリーフォーマットのILE RPGコードを生成する機能です。
3. テストプログラム生成機能 : 作成したRPGプログラムをテストするためのユニットテストプログラムを自動生成する機能です。

さらに将来的には、古いRPGコード(RPGⅢやILE RPGなど)を最新のフリーフォームRPGに変換する機能も視野に入れています。

【下野】
なるほど、フリーフォームをターゲットとしながら、RPG開発の生産性を向上しそうですね。みなさん、今にでも欲しいものだと思いますが、いつぐらいにユーザー企業は恩恵を受けられそうでしょうか? 

茂木】
ありがとうございます。この生成AIによるRPGコードアシスタントを開発するにあたっては、大量のRPGコードとその説明を学習させる必要があります。IBMとしては、自社が保有するRPGコードの量が限られているため、お客様やパートナー様からコードを提供していただき、そのコードを学習用のデータとして活用する取り組みを始めています。

スケジュールとしては、昨年(2024年)の夏頃からトレーニング用のデータ(コードとコードの説明)の収集を開始しており、現在はその収集したデータを使ってLLM(大規模言語モデル)に学習させているところです。昨年(2024年)の秋には初期トレーニングを開始し、大量のデータを読み込ませて学習させています。今後は、学習を重ねることで正確性と精度を向上させていく予定です。並行して、お客様への提供方法についても検討を進めています。

順調に進めば、2025年の春頃にアルファ版をリリースし、限られたIBMチャンピオンやコントリビューターの方々に使用していただき、使い勝手の検証を行う予定です。その後、秋頃にはベータ版を公開し、より多くのお客様やパートナー様に利用していただけるようにする計画です。最終的には、できるだけ早いタイミングで製品版としてリリースできるよう取り組んでいるところです。並行して、どのような形でお客様に提供するかについても検討を進めています。

【下野】
非常にしっかりとした計画で進められているのですね。生成AIを活用した取り組みは業界全体にとっても大きな意義があると思います。今後、プロジェクトが進む中で定期的にアップデートを伺えればと思います。

茂木】
そう言っていただけると嬉しいです。生成AIを活用することで、RPGプログラム開発の生産性を大きく向上させることを目指しています。今後も進捗や成果について随時共有させていただければと思います。また、日本でも独自のRPGコードアシスタントのプロジェクトを進めていますので機会があればそちらのお話しもさせていただきたいと思います。

【下野】
本日は貴重なお話をありがとうございました。

MONO-X AI のご紹介

MONO-Xでは、生成AI の活用という観点では、RPG開発の支援以外にも様々な活用法があると感じており、MONO-X AIをリリースいたしました。ぜひ以下の記事もご参考にしてください。
https://mono-x.com/news/news-847/

日本IBM 茂木 映典

1990年に日本アイ・ビー・エムに入社。パートナー様へのAS/400、S/36のテクニカル・サポートに従事した後に 日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリングへ出向、大規模プロジェクトでSystem iのインフラ構築を担当、 現在はIBM Powerテクニカル・セールスとしてIBM i のSMEとして活動している。