2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
IBM i の2つの強み。なぜIBM i を選び続けるのか
IBM i が選ばれる理由は、その「ビジネスのためのOS」という設計思想に基づく特徴的な機能にあります。代表的な2つの強みとして「極めて安定した高速なデータベース」と「一度作ったプログラムが動き続ける」点が挙げられます。
1. 極めて安定した高速データベース
IBM i の最大の強みのひとつは、OSにデータベースが標準組み込みされていることで実現される、他のプラットフォームでは達成できないほどの高速性と安定性です。データレコード数が膨大な企業では、他プラットフォームへの移行を試みてもパフォーマンスが不十分で断念するケースが多く、IBM i を利用し続ける傾向にあります。例えば、大規模なスーパーマーケットチェーンやローン提供会社が、現在のデータ量や計算処理を支えるためにはIBM i が不可欠であると判断しています。
2. 一度作ったプログラムが動き続ける
IBM i は、古くから稼働しているプログラムを現在の環境でも問題なく動かせる互換性を持ち、35年以上前に作成されたプログラムもそのまま稼働し続けています。他のOSでは、ソフトウェアのバージョンアップ対応が必要で、そのたびに動作確認や修正作業が発生しますが、IBM i ではそうした非生産的な作業から解放され、システムの安定稼働を維持できるのです。
IBM i ユーザー企業の二極化とその背景
新しいテクノロジー、特にAI・API・クラウドはIBM i ユーザー企業にとって大きな武器である一方で、全ての企業がそのメリットを享受できているわけではありません。デジタル戦略を進める企業と、IBM i を活用することに慎重な企業の間で、明確な二極化が進行しています。
主な理由として、IBM i は独自のシステム開発と運用に適しており、これを使い続けるには強固な人材体制が必要だからです。デジタル戦略を推進している企業では、システムと人材の好循環が生まれ、IBM i を有効活用が可能になります。一方で、人材不足やブラックボックス化したシステムを抱える企業では、悪循環に陥るリスクが高まります。
この二極化を避け、好循環を維持するためには、経営レベルでの明確な判断とリーダーシップが不可欠です。特に、IBM i を利用し続けるかどうかを経営陣が十分に理解し、システムの特性と自社のビジネスの適合性を説明することが重要です。
IBM i を有効に活用している企業では、経営レベルでの共通認識の醸成が成功しており、その結果としてシステムと人材の好循環が続きます。これが企業間の格差をさらに拡大させている要因です。
AI・API・クラウドがIBM i を使いやすくする
では、AI・API・クラウドといった新しいテクノロジーが、IBM i の活用をどのように容易にし、企業の業務改善に貢献するのでしょうか。
IBM i ユーザー企業には、好循環を保っている企業とそうでない企業がありますが、AI・API・クラウドを取り入れることで、悪循環に陥っている企業も改善のチャンスを得ることができます。これらのテクノロジーは、業務の属人化を防ぎ、スーパーマン的な人材への依存を軽減し、IBM i をより使いやすくします。では、具体的にどのようにこれらの技術がIBM i を使いやすくするのか、それぞれのテクノロジーの役割を見ていきましょう。
AI
AIは、業務の最適化とプログラミング支援において大きな役割を果たします。例えば、AIを活用することで、在庫引当数の最適化が自動で行われ、IBM i との連携により業務の効率化が進みます。また、ChatGPTのような技術は、RPGやCOBOLといったIBM i に特化したプログラミング言語の学習や支援を提供し、生産性を飛躍的に向上させます。
API
APIは、IBM i と他のテクノロジーとの連携を簡素化します。これにより、システム統合時の複雑さが大幅に軽減されます。従来は、IBM i と周辺テクノロジーの両方に精通したスキルが必要でしたが、APIの活用によって、こうした技術への依存が減り、より簡単に連携が可能となりました。
クラウド
クラウド技術は、インフラ管理の負担を軽減し、より業務改善に集中できる環境を提供します。たとえば、IBM CloudのPower Virtual Server(PVS)を利用することで、IBM i の環境を迅速に構築でき、サーバーやデータセンターの管理が不要になります。この結果、インフラ運用に必要なスキルが大幅に削減され、IBM i の活用が一層容易になります。
本章のさらに詳しい解説は、本書の序章(p.12~)をご覧ください。
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