2024年7月に、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。当ブログでは、今回の出版に合わせて、14回にわたる連載形式で書籍の内容をご紹介していきます。IBM i に関するさまざまな視点や解決策をお届けしてまいりますので、ぜひご覧ください。
はじめに
本書は、IBM i(旧称AS/400)というIBMが提供する企業向けOS(オペレーティング・システム)を利用している企業の経営者、情報システム部門、営業部門・製造部門などのユーザー部門のみなさまに向けて、次の時代の基幹システムを考える上での参考になることを目指しています。また、ITベンダーの立場として、IBM i に関わることになった方にも入門書として役立つことを願っています。
本書の最も重要なメッセージは、「AI・API・クラウド時代に、IBM i の壁は壊される」ということです。IBM i は1988年にAS/400として世に出て以来、大企業から中堅企業まで、日本だけでも約2万社近くの企業で利用されてきました。そのテクノロジー自体は素晴らしいものですが、中長期的に使いこなしていくためには企業としての覚悟が必要で、時代の流れとともに使いこなせている企業とそうでない企業に二極化してきています。
この二極化の背景には、IBM i の 2 つの壁が存在します。1つ目の壁は、IBM i と新しいテクノロジーの「技術的な壁」。もう1つの壁が、「知識・人材の壁」です。 世の中には、クラウドサービスをはじめとする新しいサービスが登場していますが、それらとスムーズにシステム連携するためには、技術的なハードルが高い状態が続いてきました。これが一つ目の壁です。今ではその壁は壊されていますが、まだまだ壁があると感じられている方も多くいらっしゃるでしょう。
そして、もう一つの壁が、「知識・人材の壁」です。最近のようにIBM i もAPI連携が簡単になる前の状態においては、仮に連携することができたとしても、それを実装するためには高度なスキルやニッチなスキルが求められてきました。「技術的に実装できなくはないけれど、やり方がわからない」「属人化の回避や業務改善のために新しいテクノロジーを実装したいけれど、諦めざるを得ない」という状況が散見されてきました。
そんな状況の中、脱IBM i プロジェクトに踏み切りうまくいかないケースや、踏み切らないまでも、別プラットフォームやERPパッケージと比較検討する過程で、改めてIBM i の価値を再評価されることも増えてきました。そして、AI・API・クラウドの普及が追い風となり、IBM i と新しいテクノロジーをどう利用するか、という流れが生まれているのです。
IBM i の情報は、進化自体も早い事や一定の前提知識が必要となってしまう事もあったり、脱 IBM i を提案するベンダーの思惑もあったりなど、なかなか必要としている情報を得にくい部分があります。そのため、本書では少しでも多くのIBM i ユーザー企業にリアルを伝えたいという思いで執筆をさせていただきました。
本編に入る前に、私たちが、本書でお伝えしたいことをまとめておきます。繰り返しになりますが、本書の最も重要なメッセージは、「AI・API・クラウド時代に、IBM i の壁は壊される」ということです。すなわち、IBM i の有効利用を阻んできた技術習得の壁や周辺システムとの連携の壁が破壊され始めているのです。
次のブログへ続く