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【IBMi】レガシーシステムの運用拡張とは?最新機能導入の必要性についても解説

2023.04.19

デジタルトランスフォーメーションが進む現代において、多くの企業が既存のレガシーシステムの限界に直面しています。IBMのIBMiは長い歴史を持つプラットフォームとして知られておりますが、レガシーシステムに含めるべきなのでしょうか。

本記事では、IBMiは脱却すべきだと言われるレガシーシステムとして扱うべきなのか、またIBMiをより長く使い続けるための運用拡張の必要性や対策について解説します。レガシーシステムとは何か、またIBMiを長く使い続けるために必要な対策が明らかになります。

レガシーシステムの特徴とIBMiの実態

レガシーシステムは時代の変遷の中で古くなった情報システムのことを指し、いくつかの特徴を持っています。IBMiはレガシーシステムの代表格として扱われ、「脱却すべきだ」と認識されることが多いです。しかし、それは誤りです。なぜなら次に解説するレガシーシステムの特徴と照らし合わせた際に当てはまらない点が多いからです。

他メーカーのコンピューターと接続できない

レガシーシステムの一般的な特徴として、異なるメーカーのコンピューターとの接続において制約が生じることが挙げられます。この制約は様々なプラットフォームや通信プロトコルの相違により、生じると言えます。

IBMiについても「同様にIBM機器でしか利用できない古い通信手順を採用している」、「他メーカーのコンピューターとは接続できない」といった認識をされがちですが、これは誤解です。実際には、IBMiはインターネットで標準とされている通信手順で接続が可能です。これにより、他のコンピューターシステムとも互換性があり、標準に沿った機器との接続が可能です。

他のコンピューターでプログラム・データベースを使用できない

レガシーシステムの2つ目の特徴として、他のコンピューターでプログラムやデータベースを使用できない点が挙げられます。IBMiのプログラムの多くは「RPG」と呼ばれる他の環境では一般的ではない言語で作られており、WindowsやLinuxといった他の環境ではそのまま使用できません。

しかし、IBMiではネットワークを介してOracle DatabaseやSQL Serverの一般的な要領でデータを取得、更新、追加、削除といった内容もできるため、オープンシステムとの統合は可能です。

また新規開発においては、SQL、Python、Javaなどのオープン系で標準的に利用されている言語での開発もできます。こうした点においても、IBMiはレガシーシステムの定義からは外れていると言えます。

管理技術が制限されている

レガシーシステムの3つ目の特徴として、資産管理や運用管理はそのコンピューターの技術でしか使用できない点が挙げられます。これはレガシーシステムが、独自の技術やアーキテクチャを採用していることに起因しています。そのため資産管理や運用管理を行うには、そのコンピューター専用のツールや技術を習得する必要があります。

これに対してIBMiは、資産管理や運用管理において標準のツールを利用することができます。それはオープンシステムを採用していていることが理由です。オープンシステムとは、特定のベンダーや製品に依存しない、標準的な技術やアーキテクチャを採用したシステムのことです。

機能拡張・新技術導入ができない

レガシーシステムの4つ目の特徴として、新しい技術の導入ができないという点があります。レガシーシステムは古い技術基盤で構築されたシステムのことを指し、新しい技術の導入ができないという特徴があります。

これは、レガシーシステムが古い技術やアーキテクチャを採用しているためです。例えば、レガシーシステムは、独自のCPUやOS、データベースを採用していることが多いため、新しい技術やソフトウェアを導入するためには、レガシーシステムのハードウェアやソフトウェアを刷新する必要が生じます。

これに対してIBMiは、新しい標準技術で開発やテスト、運用・管理が可能です。IBMiはオープンソースソフトウェアや各種標準APIに対応しているため、新しい技術やソフトウェアを導入する際にハードウェアやソフトウェアの刷新をする必要はないのです。

IBMiが脱却すべきレガシーシステムといわれる理由

以下では、IBMiが「脱却すべきレガシーシステム」といわれる理由を解説します。IBMiはレガシーシステムにない特徴を持っているにもかかわらず、レガシーシステムとして扱われることが多いです。その要因はシステムそのものの問題ではなく、運用方法や運用の属人化によるものです。

システムがブラックボックス化しているため

IBMiはしばしばブラックボックス化していると捉えられ、それがレガシーシステムとみなされる理由の1つとなっています。

元々AS/400として開発されたこのプラットフォームは、独自のオペレーティングシステムに基づき、Power Systems上で稼働しています。その特殊性から、システム内部の動作や機能の詳細が外部から見えにくくなっており、専門的な知識がなければ管理やカスタマイズが難しいという状況が生まれています。

また、システムに対する理解を持つ人材が年々少なくなっていることも、この問題を複雑化しています。結果として、現代のIT環境に対する迅速な対応が求められる状況下で、変化を遂げることが難しくなっているのです。

古いアプリケーションを使用しているため

IBMiがレガシーシステムといわれる要因の1つに、古いアプリケーションの使用が挙げられます。多くのIBMiシステムでは、数十年前に開発されたアプリケーションが現在でも稼働しています。これらのアプリケーションはその時代の技術に合わせて構築されているため、現代の技術基準や最新のUI/UX要件に適合していないケースが多いです。

このため機能を現代のニーズに合わせて拡張するためには、根本的なリファクタリングやシステムの再構築といった対応が必要になる場合が少なくありません。こうした状況がIBMiがレガシーシステムとして見られる一因につながっています。

AS/400時代で運用方法が止まっているため

IBMiのもう1つの課題は、AS/400時代の運用方法が引き継がれており、そのままイメージや運用が固定化されている点です。

AS/400は1980年代に登場し、その後IBMiとして進化を遂げてきましたが、基本的な運用方法やシステム思想は当時のまま変わっていません。これにより、今日のクラウドベースやモダンなアーキテクチャへの適応、さらにはDevOpsやアジャイルといった現代的な開発・運用方法との乖離が生じています。こうした状態において、IBMiはレガシーシステムに該当していると言えます。

企業がITシステムのスピードと機能性を競う現在の環境下において、レガシーな運用手法はIT戦略の足かせとなっているのです。

IBMiを使用し続けるために必要なこと

IBMiを今後も使用し続けるために必要なことを解説します。IBMiは長年にわたって多くの企業で活用されています。しかし、環境の変化に適応し続けるためには、定期的な機能拡張や最新技術との連携が求められます。

アプリケーションの改修、運用環境の拡充、新技術の導入といった方法により、IBMiを現代のビジネスニーズに合わせて進化させることが重要です。

アプリケーションの変更

IBMiの運用を滞りなく続けるには、アプリケーションの改善が不可欠です。既存のアプリケーションは、古くからのビジネスプロセスに基づいて構築されているため、時代の変化に伴いユーザーの要求は高まります。

まずはアプリケーションを可視化し、他社と連携でき、時代にあった新しいアプリケーションを導入していく必要があります。例えば、モバイル対応の改修や、ユーザーインターフェースの改善を行うことで、利便性を高めるなどが挙げられます。

また、Power Systems向けに最適化することで、パフォーマンスの向上を図ることも重要です。アプリケーションが最新の業務要件を満たすよう進化することで、IBMiの持続可能性を確保します。

運用の拡張

IBMiの運用を適切に行いそのポテンシャルを最大限に引き出すためには、運用の拡張が必要です。

これには少数の担当のみがシステムを運用できる帰属化を防ぎ、運用者を拡張していく必要があります。加えてDb2データベースの機能拡張や、データの保護と可用性の向上も含まれます。

運用体制を見直し、バックアップやディザスタリカバリのプロセスを更新することで、災害時でもビジネスの継続性が保たれるのです。さらにモニタリングツールや自動化ソフトウェアなどを導入することで効率的なシステム管理が可能となり、運用負荷の軽減につながります。これらの運用の拡張により、今後も継続してIBMiを使用できるようになります。

最新機能の導入と連携

IBMiは、オープン系やクラウドなどの新しい機能やテクノロジーと連携することで、その価値を高めていきます。例えば、クラウドソリューションとの統合を行うことで、必要なサービスやリソースに手軽にアクセスできるようになります。またAIやビッグデータ分析などの最新機能を統合すると、既存のビジネスプロセスに新しいインサイトを提供し、意思決定をサポートします。

これらの取り組みにより、IBMiはレガシーシステムではなく革新的なIT環境の一翼を担う存在になるでしょう。IBMiは、従来の基幹システムとしての役割に加えて、新たな価値を創出するシステムへと進化しているのです。

レガシーシステムの脱却は2024年に

2025年以降にレガシーシステムが残存すると、最大で年間12兆円の経済損失が生まれる可能性があります。そのため2024年は多くの企業にとって、レガシーシステムの見直しという大きな節目になると予想されています。

長年の運用により蓄積されたデータやビジネスロジックを維持しつつ、より柔軟でスケーラブルなシステムへの移行が急務となっています。2024年はIBMiを使用し続けながらも古い枠組みから脱却し、新しい形のIT基盤を構築していくプロセスが各企業のビジネスの持続可能性に大きく影響を及ぼすでしょう。

その過程では、上述したアプリケーションの変更、運用の拡張、最新機能の導入といった施策が極めて重要となります。

まとめ

本記事ではレガシーシステムと比較したIBMiの実態、課題やこれからの運用拡張について解説しました。IBMiはブラックボックス化や古いアプリケーションの使用などで、レガシーシステムといわれてきました。

今後も長く使用し続けるためには過去に囚われることなく、現代のIT環境に対応した変革が求められています。レガシーからの転換は容易な作業ではないものの、長期的な視点で企業の競争力を支え続けるためには、不可避なステップといえるでしょう。