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【第3章 2/2】IBM i と新技術は、どう組み合わせていくべきか|『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』

2024.12.17

2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
今回は、【3章 (2/2)】IBM i と新技術は、どう組み合わせていくべきか(本書P.73~)の内容をまとめています。

バックエンドに適したIBM i ×フロントエンドの新テクノロジー

IBM i を活用するかどうかの判断基準として、以下の2つの軸が挙げられます。

1. 汎用的な仕組みか自社固有の仕組みか
業務上、システムが汎用的な仕組みであるか、自社固有の仕組みであるかを判断することが重要です。
汎用的な仕組みには用途に応じた業務パッケージが多く存在する一方で、自社固有の仕組みではIBM i が適している可能性が高いとされています。

2. フロントエンドかバックエンドか
フロントエンドとバックエンドの特性も重要な判断軸です。フロントエンドは新しいデバイスへの対応が求められるため、進化を続ける必要があります。一方、バックエンドはデータの処理や参照、更新指示を行う役割を担い、求められるのは高いパフォーマンスと信頼性です。

バックエンドの特徴

バックエンドでは、安定して多くの処理を捌く能力が求められます。フロントエンドよりもデバイスの変化が少ないため、一度作成したプログラムが長期間稼働し続ける「資産継承性」が重要視されます。特に、IBM i はこの点で他のプラットフォームを凌ぐ特性を持っています。

他のプラットフォームでは、バージョンアップによってプログラムが動作しなくなることが多く、新機能導入のために改修作業が必要になるケースがよくあります。しかし、IBM i ではそのリスクが低いため、業務基盤としての信頼性が高いとされています。

このように、IBM i は「ハイパフォーマンス」と「資産継承性」を兼ね備えており、自社固有業務のバックエンド基盤に非常に適しています。安定した基盤と最新技術を組み合わせることで、さらに効果を発揮することが期待されます。具体的な事例について紹介いたします。

新しい顧客接点:シニア層にも浸透するLINE

従来、インターネット接続の主要な手段はPCやスマートフォンのブラウザを利用する方法でしたが、現在ではLINEのようなスマホアプリケーションが新しいインターフェースとして注目されています。

最近では、企業がLINEを活用して顧客からの問い合わせを受け付けるケースが増えています。一部の企業では、LINEを通じて注文の受付や在庫・納期状況の確認が可能なサービスを提供しており、利便性を高めています。

特にIBM i ユーザー企業の中には、シニア層を主要な顧客としている企業が多く、LINEがその需要に応えるツールとして活用されています。シニア層にとって、AmazonなどのECサイトよりもLINEのチャット形式の方が親しみやすく、利用のハードルが低いと感じられるようです。

例えば、雑貨や食品の通販サイトを運営する株式会社 優生活では、電話問い合わせによる業務負担を軽減するため、IBM i とLINEをAPI連携しました。これにより、LINEを通じて注文内容や納品日、配送状況を簡単に確認できる仕組みを構築しました。シニア層にとって直感的な操作性が評価され、LINEの友だち登録数が大幅に増加しています。

こうした事例は、新しい受発注や納期確認といった基幹システムと直結する仕組みのお客様インターフェースとしてLINEが有用であることを示しています。シニア層を含む幅広い顧客層に対応するLINEの活用は、企業の新しい顧客接点として注目を集めています。

スマートフォンが現場を改善する

スマートフォンは、顧客との接点だけでなく、工場や倉庫などの現場での活用が進んでいます。特に、多機能なセンサーを搭載するiPhoneは、エッジデバイスとして重要な役割を果たしています。現在では、iPhoneやAndroidデバイスが、さまざまな現場業務において欠かせないツールとなっています。

工場や倉庫では、以下のような場面でスマートフォンが活用されています。

・製造現場の検査記録や不良報告
・安全パトロールや店舗巡回
・在庫棚卸、物流倉庫での作業記録
・設備点検や保守・点検サービス

スマートフォンだけでなく、Bluetooth対応デバイスとの連携も現場効率化に貢献しています。例えば、iPadとBluetooth連携したバーコードリーダーを使うことで、製造番号やセンサーで取得したデータを簡単に自動入力でき、生産性の向上が期待されます。

さらに、ノーコードソリューションの普及により、iPad向けアプリを簡単に作成できるようになり、センサーとの連携も容易です。この手軽さが業務改善の手法として注目されています。

また、最近ではARグラスの普及も進んでおり、2024年春に登場したApple Vision Proは大きな話題を呼びました。ARグラスが業務や生活に浸透するにつれて、これらのデバイスで入力・表示されるデータの基盤として、IBM i の重要性が引き続き高まると予想されます。

適材適所のものをどうつなぐか。デファクト化するAPI 連携

これまで述べてきたように、IBM i はさまざまなインターフェースを通じて基幹システムのデータを更新・参照できるプラットフォームですが、その中でも特に注目すべきは、実装のしやすさです。基幹システムと新しいデバイスを簡単に連携することは、企業の効率向上に欠かせません。

「簡単」の意味:APIの役割

基幹システムとマルチデバイスの連携における「簡単」とは、基幹システムの詳細を完全に理解せずとも、フロントエンドの開発が可能になることを指します。この連携を支える鍵が、API です。特にRESTful APIの普及により、異なる開発領域間のスムーズな連携が可能になりました。

従来の連携プロトコルは学習コストが高く、ネットワーク帯域にも制約がありました。しかし現在では、APIの一般化により、これに対応したIBM i も進化を遂げています。特に、API-Bridgeのようなツールの登場により、IBM i のAPI連携が格段に容易になりました。

API化ツールの進化と普及

2020年頃から、API化ツールの普及により、かつては高度な技術者に限られていたAPI連携が、現在では一般の開発者にも身近なものとなりました。例えば、レガシープログラムの在庫照会機能をAPI化することで、モダンなシステムとの連携が迅速かつ簡単に実現可能となっています。

IBM i とAPI連携の実例

IBM i とAPI連携する対象は多岐にわたります。以下の表には、連携のユースケースを示しています。

最も多く相談を受けるのは、kintone との連携ですが、他にもSlack、Salesforce、Boxといった主要SaaS製品がAPI連携に対応しています。特に最近では、小売店でのスマレジの普及に伴い、これとの連携に関する需要も増加傾向にあります。このように、SaaSの進化に伴い、連携先の多様性が広がっています。

APIの普及とツールの進化により、IBM i は基幹システムとしてさらなる可能性を広げています。新しいデバイスやサービスとの連携を簡単に実現できるこの仕組みは、企業の競争力を高める重要な要素として注目されています。

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