2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
今回は、【2章 (2/2)】AI・API・クラウド時代の基幹システム(本書P.54~)の内容をまとめています。
クラウドのメリット=業務改善に集中する環境作り
クラウドは、インフラ管理の負担を軽減し、企業が業務改善やアプリケーション開発に集中できる環境を提供します。そのメリットは以下の2点に集約されます。
1. サーバー管理の簡略化(楽)
クラウドを利用することで、サーバー管理を外部委託しやすくなります。これにより、情報システム担当者はインフラ管理から解放され、限られた時間をDXや業務改善に費やすことが可能になります。
2. 柔軟なリソース調達(早い・アジャイル)
必要なサーバーを即座に作成・削除できるため、短期間で新しい環境を試すことができます。例えば、IBM i のバージョンアップ時に既存環境をコピーして試すことが容易になり、オンプレミス環境に比べ、効率的かつ低コストでの検証が可能です。
このように、クラウドはインフラ業務を最小化することで、企業がデジタル施策を試しやすくし、業務改善を加速する土台を提供します。特に、DXが求められる時代において、インフラ管理を外部委託することで、企業内リソースを戦略的に活用できることは大きな利点です。
APIのメリット=基幹システムを活かしたDXを実現
APIは基幹システムを他のシステムやサービスと容易に連携させる手段を提供し、DXの加速に大きく寄与しています。そのメリットは以下の通りです。
1. 柔軟な連携が可能
APIを利用することで、基幹システムはSaaS(例: kintoneやSlack)やWebサービスと連携できるようになります。これによりシステム利用者は、基幹システムを黒い画面以外にも、ブラウザを介した操作が可能になります。また、郵便番号APIでの住所補完やFAXサービスAPIの活用など、実用的な業務改善も実現しています。
2. 詳細な知識が不要
APIはシステム間の連携を簡単にするためのプロトコルであり、システム同士の詳細な仕様を理解する必要がありません。担当者はAPIの仕様だけを把握すれば連携が可能で、効率的なシステム構築をサポートします。
3. 企業規模に応じた活用の広がり
大企業では、社内の全システムをAPIで統合する動きが進む一方、中堅企業では迅速なDXや業務改善の手法としてAPIが活用されています。さらに、外部データを取り込んで意思決定の質を高める取り組みも見られるようになりました。
4. クラウドとの高い親和性
クラウドが「必要な環境をすぐに提供する」仕組みであるのに対し、APIは「必要な機能を呼び出す」手段として機能します。この2つの親和性により、クラウド上のシステムがAPIを介して連携することが標準となり、効率的なシステム運用が可能になります。
現在、APIの活用は企業のDXに欠かせない要素となっており、基幹システムがDXの中心で活躍できる時代が訪れています。IBMが早期に提唱したAPI連携のビジョンは、10年を経て、ようやく多くの企業に広く受け入れられるようになりました。
コラム:APIとは
API(Application Programming Interface)は、異なるシステム間で情報を交換するための仕組みで、「サーバー」と「クライアント」の2要素で構成されています。サーバーはデータや機能を提供し、クライアントはAPIを利用してそれらを取得・操作します。
APIリファレンスの役割
APIの使い方を記したドキュメント「APIリファレンス」を基に、クライアント側の開発者は開発を進めます。ただし、APIの内部動作を詳しく理解する必要はなく、APIを「どう使うか」を知るだけで十分です。
基幹システムでの活用例
納期計算ロジックのように複雑なビジネスロジックは、従来は基幹システム側で作成されていました。しかし、新しい仕組みが追加されるたびに同様のプログラムを繰り返し開発するのは非効率で、管理も煩雑になります。
APIの解決策
APIを活用すれば、基幹システムのプログラム資産を外部システムから簡単に利用できるため、同じ機能を再開発する必要がなくなります。これにより、生産性が向上し、基幹システムの価値を最大限に活用できます。
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