2024年7月、IBM i ユーザーと関係者の皆さまへ向けた書籍『IBM i 2030 AI・API・クラウドが創る』を出版いたしました。本書の内容をより多くの方にお伝えするため、当ブログでは各章の要点を連載形式でサマリーとしてご紹介いたします。本記事では全体像を簡単にご理解いただき、さらに詳しく知りたい方はぜひ書籍の詳細をご覧ください。
今回は、【1章 (3/3)】IBM i とは何か? AS/400から受け継ぐ唯一無二のビジネス専用のアーキテクチャー(本書P.33~)の内容をまとめています。
前回の続き
IBM i の特徴③ーIT資産保護
IBM i は、IT資産保護の観点で優れた特性を持つシステムです。物理サーバーIBM Power上で稼働し、ハードウェア更新が必要な場合でも、仮想化技術により古いアプリケーションやデータベースをそのまま新しいハードウェアで利用できる仕組みが整っています。
AS/400のコアとなるアーキテクチャー、TIMI(Technology Independent Machine Interface)は、ユーザーがプログラムを修正せずにハードウェアの違いを吸収する役割を果たし、長期間にわたり安定した運用を可能にしています。IBM i の資産継承性と高い信頼性が、35年以上にわたり多くの企業で重宝されています。
AppleとIBM i 。共通する設計思想
AS/400のアーキテクチャーは奥深く、IBM i の本質を理解するのは容易ではありません。IBM i を理解するための例としてAppleのiPhoneが挙げられます。IBM i とiPhoneは、名称が似ているだけでなく、アーキテクチャーや思想においても共通点があります。この比較により、IBM i の設計思想に触れることができます。
では、iPhoneとは、どのようなものなのか。改めて紐解いてみましょう。私たちもiPhoneユーザーですので、ユーザー視点で以下のような特長を挙げてみました。
•ハードウェア・OS・基本アプリケーションをAppleが設計・開発
•端末間のデータ移行が簡単
•高度なセキュリティ
•カメラやタッチ決済機能など多様なデバイスの統合
必ずしもこれが正解とは限りませんが、これらがiPhoneの特徴と考えられます。では、これらの特徴がIBM i とどのように共通しているのかを解説していきます。
「ハードウェア・OS・基本アプリケーションをAppleが設計・開発」
iPhoneとIBM i は、ハードウェアから開発言語まで一貫して統合開発されており、他社製品が入り込みにくい構造です。このため、高い安定性とセキュリティを実現しています。
ハードウェア・OS・基本アプリケーションをAppleが設計・開発
「端末間のデータ移行が簡単」
スマートフォンには電話帳や写真、アプリデータなどが蓄積され、データ移行の重要性が増しています。AppleのiCloudを使えば、簡単にデータと環境を移行でき、長期利用者もその恩恵を受けています。IBM i も同様で、標準の保管・復元機能により、データベースやアプリケーションを改修せずに新システムへ移行可能です。x86系とは異なり、OSやアプリケーションを一括移行でき、最新ハードウェアで利用できます。
「高度なセキュリティ」
AppleはiPhoneで多くの保護機能を備え、ハードウェアからアプリまで一貫した設計で高度なセキュリティを実現しています。IBM i も同様に、統合設計により高いセキュリティを標準で備えています。その根幹となるのが、IBM i が採用するオブジェクト指向アーキテクチャーです。これにより、ファイルやプログラムなどの属性をユーザーが自由に変更できない仕組みが整えられ、OS内のすべてのオブジェクトが正規のAPIを通じて管理されます。対して、WindowsやLinuxは拡張子で属性を管理するため、プログラムやファイルを偽装することが容易で、悪用によるウィルスやマルウェア被害が発生しやすくなります。IBM i ではこのような偽装手法が通用しないため、非常に安全性が高いと評価されています。
「カメラやタッチ決済機能など多様なデバイスの統合」
iPhoneは時代のニーズに応じ、電話以外の機能を充実させ、1台で多様な生活機能を提供するオールインワンシステムです。この点でIBM i とも共通しています。IBM i はサーバーとして、カメラや決済といったエンドユーザー向け機能は持ちませんが、WebやAPI、オープンソース技術によりフロントエンド機能と接続し、ビジネスを包括的に支える拡張性を持っています。
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