PVSをご検討いただくと、「IBM i で0.25コアのスペックでも、パフォーマンスは十分に発揮できるのかというご質問をよくいただきます。今回は、お客様からよくいただく質問にお答えしたいと思います。
IBM i のクラウドPVSはCPUを0.25コア刻みで設定することができます。最小が0.25コアで、その次が0.5コア、0.75コア、1コア、1.25コアといった形で、0.25コアずつ増やしていくことができます。そして、MONO-Xは、日本で最も多くのIBM i のPVS環境の構築・運用管理経験を有しており、その経験値からいくと、ほとんどのケースでIBM i の場合は0.25コアでも十分なパフォーマンスを出すことができます。
一般的にサーバーで考えると、0.25コアで、システム、サーバー、それも基幹システム全体を動かしてしまうなんて考えられないと思いますが、それができてしまうのがIBM i なんです。なぜそれが可能なのか、3つのポイントで解説していきます。
1. パフォーマンスってそもそも何?
IT業界ってパフォーマンスっていう単語がすごく行き交っていると思いますが、皆さんはどのような意味でパフォーマンスという言葉を使用されていますか?よくパフォーマンスがいいとかパフォーマンスが悪いとか言いますよね。ITのパフォーマンスがいいってどういうこと?というのをChatGPTに聞いてみたら、5つ挙げてきました。速度、効率、スケーラビリティ、信頼性、セキュリティ、この5つをバランスよく高水準で満たすこと、という回答でした。
ChatGPTの指摘も確かに一理ありますが、ChatGPTの言っている5つの観点を全て網羅するのって難しくないですか?パフォーマンスってそもそも多方面な意味があって、同じことを話しているつもりでも、違う意味でパフォーマンスをお互い想定していたということもあると思います。今回は、CPUのコア数のお話をしますので、0.25コアでも十分か、つまり速度がパフォーマンス的に足りているかということをお話ししたいと思います。
この速度っていったときに皆さん思いつくのがCPUのスペック、性能、数字ですよね。しかし、それと体感が違うということはよくあると思います。
IT業界だと、その速度、パフォーマンスを可視化するためのベンチマークってかなり情報が出ていると思いますが、IBM i はIT業界の異端児なので、CPUのベンチマークに適さないこともあります。基準として重要なのは、ユーザーの体感や使用感です。IBM i にもCPWというCPUの性能を測る指標があります。これは、必ずしも速さと関係しているわけではありません。数値的なことよりも実際にシステムに触る業務を担当される方が感覚的に早いか遅いか、それが究極のパフォーマンス指標と言えると思います。
何を言っているかというと、同じレスポンスのシステムであっても、人によっては遅いと感じたり、人によっては早いと感じたりすると思います。なので、数値比較もいいですが、大事なのは、パフォーマンス論ではなくて実際にシステムを使う人。その人が今まで通りか、今までよりも快適かっていったような体感的なところのパフォーマンスをベースにサイジングをしたいというのがMONO-Xの考え方です。
2. CPW神話崩壊!?
ここからは結構マニアックなIBM i の話になります。先程も少し出てきましたが、IBM i の世界にはCPWという性能指標がありますよね。CPWはCommercial Processing Workload(コマーシャルプロセッシングワークロード)の略です。これは、一般的な業務処理をどれだけ効率的に実行できるかという指標で、このCPWの値が大きいほどサーバーの処理能力が高いという評価になります。
ざっくり言うと、速さではなくて、スループットを示す指標です。単位時間あたりの処理能力が高いか低いかをCPW値で評価することができます。
つまり、CPWが2倍になると、同じ時間で2倍の仕事をこなすことができますよ。という意味になります。速さの指標だという誤解が結構ありますが、実際に2000年代のPower 6までは、CPWが2倍になるとバッチの処理時間が半分になりますみたいな時代でした。何故かというと、CPUって2000年くらいまではクロックを速くして性能を上げていくという高速化を図っていました。ですので、CPUのクロックが速くなるのと、それにつれてCPWも性能が上がっていったので、いい具合にリンクをしていて、CPW二倍になったらバッチが半分になったみたいな経験値があったりします。
2000年代の後半にPower 6が出ていますが、速いものだとクロックが5GHzまでいっていて、CPW値もそれに合わせて上がっていました。でも、CPUのクロックを上げる限界というのは、Power 6の頃で、それ以降のCPUは並列処理をするとか、内部バス帯域を太くするといったことで全体の処理量を上げよう、というクロックじゃないところでスループットを上げるという設計に変わってきて、今に至ります。
Intelのチップだと、HyperThreadingという機能で、1つの物理コアを2つに見せて論理的に動かすことができます。しかし、Powerの場合はSMTというテクノロジーで、Power 7の場合は4スレッドで動作するSMT4、Power 8からは8スレッドのSMT8という機能があります。つまり、一つの物理コアを8つの論理コアとして使うことができます。この並列処理をさせることでスループットを稼いでいるので、Power 7以降もCPW値としては2世代ごとに約2倍になっています。
ここで大事なポイントが、並列処理をさせて、CPUの性能指標、CPW値を上げているということなんです。最新のIBM i であれば、並列処理をさせる仕組みももちろんありますが、その機能はあまり使われていなくて、IBM i の環境の場合にはベンチマーク的に使われるバッチ処理ってシングルスレッドのジョブが多い場合が多いです。
IBM i は1コア以内で動かしていると、論理的には8スレッドのCPUを使っていますので、ジョブが8スレッドでの処理により、CPWの性能を十分に発揮する仕組みになっています。でもこのバッチが8並列で動いているケースってなかなかないですよね。なのでPower 6以前の環境の感覚で、CPWが増えたからといってパフォーマンス、つまり速さが上がるという風に思ってしまうと、実はそれが体感的に意外と早くならないというのを皆さんが経験していると思います。むしろスレッド数が違うPower 7以前からPower 8にCPWをサイジングすると遅くなったりします。
CPWだけに頼ってサイジングするのはもう古いんです。
3. 0.25コアがコスパ最強!
じゃあどうやってスペックを決めるの?って思いますよね。PVSの場合は0.25コアからのスタートをお勧めします。もちろん、ちゃんとパフォーマンスデータを分析させていただいた上で、0.25コアではなくて、0.5コア、1コアといったスタートをお勧めする場合もあります。一番大事なのは体感のパフォーマンスです。
CPUは並列処理性能を高めてスループットを上げていますが、速度に直結するクロック数は横ばいです。最近の技術で体感速度に効いてくるのは、ディスクのレスポンスです。
PVSではNVMeかSSDのこの2種類のディスクから選ぶことができます。HDD(ハードディスク)はもはや選べません。このフラッシュテクノロジーのNVMeとSSDをIBM i で使うと、パフォーマンスが劇的に良くなります。PVSだと、高速なフラッシュディスクのNVMeかSSDしか選べないので、実は体感的なパフォーマンスに大きな影響を与えるのは、CPUではなく、ディスク性能であることが多いです。(※2024年11月現在ではディスクの種類を選ぶのではなくIOPsを選択する形式となっています。25 IOP/GBのディア0、10 IOP/GBのティア1、3IOP/GBのティア3と容量に依らない5000 IOPから選択できます。)なので、現行のオンプレからCPUの数を0.25コアまで減らした結果、ディスクが早かったので、体感的に高速化された。といったようなお声をいただくことが非常に多いです。PVSの動くPower 9環境だと、0.25コアで3750CPWもあります。CPUやディスクだけではなくて、Power 9のチップはBUS帯域なども高速化されているので、体感的な速さはCPUの割り当てコア数だけでは単純比較はできないということをお伝えしたいです。
現世代のPowerサーバーは、フラッシュストレージとの組み合わせで十分なパフォーマンスを得られることがほとんどなので従量課金のPVSを使っていただく場合には、コスパ最強の0.25コアでのスタートをお勧めしています。なにより、PVSでのIBM i のライセンス費用が大きな割合を占めるため、0.25コアでのOSライセンスが最も経済的な選択となります。もちろん、パフォーマンスに問題があれば、PVS環境でもパフォーマンスデータをちゃんと分析して、データに基づいたサイジング、最適化をさせていただきますので、コスト最適化をしつつ、柔軟なIBM i 、PVSの環境をお試ししていただきたいと思っています。
IBM i をもっと上手に活用していきたいお客様も、IBM i で最新機能にチャレンジしながらいい仕事がしたいという方も、パフォーマンスデータの取得手順から支援させていただきます。
その他、ご質問や不明点がございましたら公式サイトをご覧ください。
また、オンライン相談も受け付けておりますので、ぜひご利用ください。
▼詳しくはこちら
PVS One 公式サイト
オンライン相談
=================
お問い合わせ・ご相談はこちら