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「AS400はいつまで使える?」の答え方

2023.07.07

(2020/10/22記事再掲載)https://www.imagazine.co.jp/asobibar-002/

IBM i(AS/400) がいくら素晴らしい製品で、お客様がそれを使いこなす体制を作っても、メーカーから提供されなくなってしまうと元も子もありません。ですから、「IBMがこれからもIBM iを提供し続けるのか」というのは、IBM i をご利用される企業が長期利用を判断する際のリスク要因としては重要です。

IBMの発信内容

IBMからは「IBM iをこれからも提供し続けます。IBM iをこれからも進化させていきます」というメッセージが、定期的に出されています。Webサイトやセミナーなどを通じて、繰り返し伝えられているこのメッセージは、主に以下の趣旨です。

・ リリースや開発のロードマップを明確にしている(2020年時点で資料には2033年まで書かれており、年々更新されています)。
・ IBM iはモバイル、クラウド、AIなど、常に時代の要請に対応した機能拡張を繰り返してきている。
・ 世界中のさまざまな企業での実績・事例がある
・ 開発拠点であるロチェスター研究所での人材採用も強化しており、IBM iへの投資を継続している

資料|IBM iホワイトペーパー IBM i変革者による変革者のためのプラットフォームより

ただ、こうした内容を聞いても、「10年後はどうなるのか」と思われたり、「勝手に計画を変更するのでは」と思う方も、やはりいらっしゃるのでないでしょうか。しかし、IBMにとっても、合理的かつ、現実的な判断として、IBM iを提供し続けていくと思っています。それは以下の2つの理由です。

1.IBMの他プロダクトとのつながり(依存関係あり、IBM i だけ辞めるとか難しい)
2.実質ソフトウェア事業であること(つまり 高利益率 な可能性高い)

1.IBMの他プロダクトとのつながり(依存関係)

Db2

IBM i にはたくさんのIBMのコアテクノロジーが組み込まれています。
大きくはDb2、WAS、IBM Power の3つでしょう。

まずDb2という観点では、Db2はLinux、UNIX、Windowsで稼働するLUW、IBM Zの上で動くDb2 for z/OSがあります。特にDb2 for z/OSは、金融機関や大規模な製造業はじめ、社会インフラに近いようなシステムで使われています。

このようにDb2ファミリー製品は、多少プラットフォームごとに違うところはありますが、データベース・カラム・タイプやツールなど、共通する部分も多く、関連性の高いプロダクトなのです。より一体となって開発されているようです。その共通性は、近年増してきているといわれています。

Power

そして、POWERという観点では、IBM iだけでなく、AIX、Linuxの基盤としても使われており、Linuxは一時期は世界最速のスパコンだったSummit、そして、SAP HANAなど今伸び盛りの領域でも使われています。研究開発体制も共通であったり、特許などの知的財産も複雑に絡んでいることが推測できます。

つまり、IBM iに使われているテクノロジーは他のIBMプロダクトに組み込まれており、そう簡単に切り出すようなことはできないでしょう。売却したSystem xとは、明らかにその点が違います。

2.実質ソフトウェア事業としての特性が強いこと

IBM CloudにおけるIBM iのライセンスが占める価格をご覧ください。同じハードスペックでAIXとIBM i を比べると、如何にIBM i はOS部分の費用が多くを占めているかわかります。

一般的に、ソフトウェア・ビジネスは顧客基盤ができると、きわめて収益性が高いといわれています。
残念ながら、IBM iに関わる事業の収益性は一切公表されていませんが、15万社以上で使われているというIBM iは 、損益分岐点をとうに越えていることは想像がつくのではないでしょうか(あくまで想像の域を出ませんが)。
ですので、IBM iはハードウェアビジネスと扱われがちですが、実態としてソフトウェア・ビジネスです。

「IBM iはいずれ無くなる説」を唱える人の2つの論理展開パターン

「IBMはハード・ビジネスを売却してきた。だからIBM iも売却するに違いない」説

「IBMはいずれIBM i を売却するのでないか」という疑念は、ロジックを確認すると、一番多いのは、この説です。

これは、先述の通り、IBM iはDb2も含まれているなど、他の事業との依存度が高いこと、そして、ソフトウェア・ビジネスとしての性質が強いことの2点が、x86サーバーのビジネスとはまったく違うことが説明できるのでないでしょうか。

x86サーバーは、基本的にIntelのプロセッサを調達して、組み立てて、OSは同梱して販売する場合は、マイクロソフトからWindowsライセンスを購入して販売するビジネスで、競合がたくさんいます。

実際に、IR資料を確認すると、x86サーバー事業売却を境に、ハードウェア製品を担当するSystems Technology Group(STG)の粗利率は、30%代後半~40%台から、40%台後半へと改善しています。

一方で、IBM iはソフトウェア・ビジネスですし、競争の激しいコモディティ製品でないことから、利益率は高いと推測できます。だからSystem xと同じに語るのはミスリードだと思います。

「他社はオフコン事業を撤退してきた。だからIBMも売却・撤退するに違いない」説

これも x86売却したらから、IBM i も売却するでしょう説に 続いて多い説です。しかし、ほぼ日本でしか営業していない富士通・日立・NECの汎用機・オフコンビジネスと比べると、市場規模が異なります。さらに、最も投資費用のかかるプロセッサの開発費用も、AIXなどと共同開発できるIBM iは相対的に抑えることができます。

NECのA-VXが稼働するハードウェアExpress5800/600や、富士通のASPが稼働するPRIMEQUESTのプロセッサはIntelプロセッサを採用しました。しかし、一度プロセッサを他社から調達すると、Intelプロセッサの世代が変わる度に、アプリケーションの資産継承性を担保したOS開発が必要となります。この研究開発投資からは逃れることができなくなってしまい、それが製品の継続性を非常に難しくしてしまうのです。

つまりユーザー数もまったく異なるし、プロセッサの開発費用の負担も他社のオフコンとはまったく異なるのです。

まとめ

『IBM i は永遠に不滅です!』とは 流石に言えませんが、「IBM i に今後も投資をし続けていきます」とIBMも宣言しています。

その宣言は、決してボランティアでやっているわけではなく、何よりもIBMにとって合理的です。極論、儲かれば、その事業をやり続けるという話だと思います。あるとしたら、切り離して、売却するとかでしょうか。でも上記の依存関係がありすぎて、x86をLenovoに譲渡したようなことは極めて難しいのでないでしょうか。

こうした前提をもとに、私はこれからもお客様がIBM iというプラットフォームをうまく使っていけるような、お手伝いができればと思っています。

本記事は 弊社 下野 が iMagazineのブログに連載した内容を加筆・修正のうえ、掲載しております。

ASobi/Bar 400|「IBM iはこれからも大丈夫?」への答え方(下野皓平)

https://www.imagazine.co.jp/asobibar-002/